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    万年筆で詩を書こう。じぶんの心を救うポエトリーライティング【ワークショップ】

    万年筆で詩を書こう。じぶんの心を救うポエトリーライティング【ワークショップ】

    店長
    こんにちは、万年筆屋のIl Duomo店長・佐藤です。
    以前、こんな記事を書きました。
    わたしは小学校1年生のときから、詩がとても好きでして、小学校低学年のときの将来の夢は「詩人」、尊敬する詩人はまど・みちおさんでした。
    詩を書くということは、わたしにとって「こころを整えること」に他なりません。だれに見せるわけでもなく引き出しに溜まっていくだけのノート。
    でも、書かずにはいられないのです。詩を書いているときは、ほんとうの自分に出会えるような気がしていました。
    いろいろあって、数年前に古本屋・庭文庫のみきちゃんと出会い、彼女と詩の交換などすることも増えました。そんななかで、2019年12月にふたりとしては初めて、詩を書こう会(ワークショップ)を開催するに至りました。
    その後、みきちゃんがうちに一冊の本を持ってきました。
    それがこちら。
    あふれでたのはやさしさだった/寮美千子・著 (Amazonへリンクします)

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    「あふれでたのはやさしさだった」との出会い

    こちらは、作家の寮美智子さんが奈良少年刑務所でもっとも支援が必要な子たち(つまり問題児)のために行った、社会性を養うプログラムのようすを手記にまとめた本です。
    このプログラムの核を成しているのが、「詩」です。
    最初、少年刑務所の受刑者たちは、心をかたくなに閉じており自分の気持ちや感じたことを言葉にするということがなかなかできず、社会性という点でも問題ばかり。怒鳴ったり、無駄に動き回ったり、キレたり。
    ですが、この本の中で奇跡が起こります。
    彼らは寮さんのこの詩のプログラムのなかで、自分の思いを詩にしたため、その思いを仲間や指導者に受け入れてもらうことにより、自分の犯した罪や壮絶な過去について、自分の心でしっかり受け止め、昇華し前向きに生きていくことができるようになったのです。
    しかも、このプログラムは何期も行っているので、毎回メンバーは違います。でも、毎回奇跡のように、心を硬く閉ざしていた受刑者の少年たちが、自分の傷を詩として表現してくれたり、やさしい思いを見せてくれるようになるのです。

    大人になるたびに鎧を分厚くする私たち

    詩を書くことで、わたしはほんとうの自分だと自分で認識しているものを、再確認することができました。

     

    「あふれでたのはやさしさだった」を読んだとき、はじめて詩を書いた時のよろこびや、なぜ書かずにはいられなかったのか、ということが思い起こされました。

    大人になるにつれて、人間は常識とか習慣とか文化とか、いろいろなものを身に着けていきます。それゆえに、赤ちゃんの時にあった柔らかい透明な心に、どんどん硬い鎧がかぶさって行ってしまいます。

     

    鎧は社会を生きていくために、必要なものかもしれません。でも、自分の中にある柔らかい子供の部分というのは、撫でてあげたり、味わったりしてあげられない。

    詩を書くということは、そんな鎧を一枚ずつはがして、柔らかい心に触ってみる行為なのかもしれません。

     

    さらには、この詩のプログラムでは、詩を発表して仲間に受け入れてもらうというフェーズもあります。ここでの少年たちの優しい言葉も素晴らしいのです。
    みんなの詩を読み合うことで、感じていることはひとりひとり違うんだということにリアルに気づくことができます。

    わたしはこの詩のプログラムは受刑者のためだけでなく、すべての人に共通する救いになる、と思いました。

     

    個人的な意見になりますが、昨今の格差問題、そしてそれからくる差別・排斥…あるいは特定の人への誹謗中傷などというのは、理性ある人間としてあってはならない悲しい行為だと思っています。
    特に最近はSNSの発達で匿名でどんなことでも言えるため、それが助長されているようでなりません。
    すべての人は尊い。すべての人はやさしさを持ちうる。ただお互いにそれを知ろうとしていないだけ。わたしはそう思っています。
    みきちゃんも同じことを感じていたようです。この本と同じような流れで、詩を書こう会を進めていくことになりました。

    みんなで少年の詩を朗読する

    冬の詩を書こう 庭文庫 万年筆

    テーマ:冬の詩を書こう

    流れ…

    1.わたしからイントロダクション。

    2.自己紹介かんたんに(どこからきたか、名前(ニックネームでも)、好きな季節と好きな色をいいましょう)

    3.少年の詩の朗読と、まどみちおさんの詩をみんなで声を合わせて読む

    4.みきちゃんから、詩の掘り起こしかたレクチャー

    5.自由に、庭文庫の庭や室内で詩の種になる自分の心と会話してみる

    6.テーブルに帰ってきて、詩をつくって、用紙に清書する

    7.ひとりずつ朗読を発表していく
    発表→まず他の人から感想をもらう→自分の詩の意図をいう

    8.まとめー感想

    イントロダクション、わたしから

    万年筆 詩を書こう 庭文庫

    わたしはこの日のために資料をけっこうつくりこんでいました。

    寮美千子さんのされたプログラムになるべく近く、なるべく参加者全員がじぶんのこころを心置きなく表現できるように。
    参加者全員、ひとりのこらず安心して詩を発表できる場をつくれるように。

     

    そんな思いで、資料の最初にはわたしの書いた文章を、わたし自身が朗読させていただきました。

     

    わたしがなぜ詩を書くようになったかという私的な内容です。
    わたしは、小さいころ、あまりしゃべらずずーっと絵を描いているような子だったのですが
    当然、なにも考えていなかったわけではありませんでした。

     

    むしろ、まわりの表情や感情に過敏に反応していたので、いつも怯えていました。なるべく感情から目を背けて黙っていようと思っていたんですね。

     

    小学校に上がって、国語の授業で詩に出会いました。
    そこから、わたしは詩を書くようになりました。

     

    誰に見せるわけでもなかったのですが、年間ノート10冊分くらいは書いていました。
    当時、わたしのいっていた学校の教室には、生徒がどれだけ自主学習しているかを測るために自主学習ノートを積み上げる習慣があったのですが、
    わたしはそこにこっそり詩のノートを挟み込んでいました。国語の自主学習としてカウントしてもいいだろうと思っていたからです。

     

    同時に、誰かがひょんなことで詩のノートを発見して、わたしの心をわかってくれたらいいなという思いもありました。(でもこっそり挟み込んでいたので、だれにも見つかりませんでした)

     

    詩を書くようになって、わたしの心はだいぶ救われました。
    ノートに自分の気持ちや、美しい風景のことを書くと、だれかに伝えたような気分になります。

    友人がわかってくれなくても、いじめられても、家庭で悲しい思いをしても、詩にすればなぜか昇華された気分になります。

    これはまさに表現のはじまりです。

     

    こういった経験から、詩を書く、ということはなにも詩人のためのものではない。
    むしろ万人のためのものである、という思いがわたしの中にあるのです。

    ーーとこんなようなことを朗読しました。
    なぜ詩を書こう会を開きたかったのか、みなさんわかってくれたと思います。

    自己紹介で、相手を「わかる」

    冬の詩を書こう 庭文庫

    自己紹介って、ともすればマウント取り合戦になってしまいます。
    詩を前にすると、もはやその人の肩書などどうでもいいものです。
    肩書も、年齢も、性別も、詩の前では無力。
    というか、そういったものを取っ払うためのこの「詩を書こう会」なのですから、なるべく先入観が無いように肩書や見た目・性別年齢で判断しないようにみんながいられるように努めたいなと思いました。
    ですので、自己紹介はあえてシンプルに。
    「名前(ニックネームでも)、住んでいるところ、好きな季節と、好きな色」
    にしました。
    好きな季節と、好きな色は見事にみんな違いまして、それだけでもおもしろいものでした。
    「夏ーー新緑のころ」
    「冬ーー雪のころ」
    「秋ーー晩秋」
    「秋ーー秋の始まり」
    「春ーー桜の季節」
    「黄色」
    「紺色」
    「茶色」
    「白」
    「紫」
    「好きな色、とくになし」
    あ~、いいよね。
    うんうんわたしも好き。
    同じだ。
    など、みんな相槌を打ってくれます。
    みんな、好きな色や季節の話をするときは、ふっと顔がほころびます。
    みんなひとりずつに、好きな季節がある。
    世界中どこのひとだって、好きな季節や天気がある。
    そんな当たり前の事実に気づいた時、人間のカラフルさに胸を打たれます。
    肩書抜きの自己紹介は、場が和みます。

    みんなで朗読する

    詩の朗読のところでは、次のような詩を、「あふれでたのはやさしさだった」から引用して読みました。

    くも

    空が青いから白をえらんだのです

    あふれでたのはやさしさだった

    この「くも」という詩は、授業では言葉の少なかった受刑者A君がつくった詩。彼はこの詩を朗読すると、堰を切ったように語りだしたといいます。
    「今年でお母さんの七回忌です。おかあさんは病院で『つらいことがあったら、空を見て。そこに私がいるからね。』と僕に行ってくれました。それが最後の言葉でした。お父さんはいつもお母さんを殴っていた。僕は小さかったから、なにもできなくて…」

     

    教室の仲間もつぎつぎと手を上げ感想を言いました。
    「僕はおかあさんをしりません。でも、この詩を読んで、、空を見たら、お母さんに会えるような気がしました」と言い泣く子もいました。

     

    少年の詩をいくつか読んだ後、みんなで声をそろえて次の詩を朗読しました。

     

    今回はなんとニューヨーク出身の日本語のしゃべれない方が参加してくださったので、公式に英訳の付いているまどみちおさんの詩をえらびました。

     

    なみと かいがら

     

    まど みちお

     

    うずまきかいがら
    どうして できた
    ―― なみが ぐるぐる
    うずまいて できた

     

    ももいろかいがら
    どうして できた
    ―― なみが きんきら
    ゆうやけで できた

     

    まんまるかいがら
    どうして できた
    ―― なみが まんまるい
    あわ たてて できた

     

    WAVES AND SHELLS

     

    訳:美智子

     

    Spiral shell, how were you born?
    I was born
    While the waves were whirling
    Round and round.

     

    Pink shell, how were you born?
    I was born
    While the waves were shining
    Under the sunset glow.

     

    Round shell, how were you born?
    I was born
    While the waves were bubbling
    Foamy froth.

     

    まどみちお作・英訳/美智子
    ちなみに翻訳は、上皇后の美智子さまです。おどろくほど伝え方が正確で、英語の詩としても非常に美しい。素晴らしい翻訳です!

    詩はどうやって掘り出す?

     

    さて、ここで詩を書きましょうか~といっても、急に書けないということで、みきちゃんより詩を書くときのコツを教えてもらいました。

    みきちゃん
    詩は、飛躍してもいいものです。じぶんのための文章なので、ほかのひとに伝わらなくてもいいです。
    たとえば犬だったけど、次の場面にはヒトに変わっている。
    海だったけど宇宙でもいい。それと、「痒いところを掻く」ように書くといいです。ここまでしか出ないな~というとき、もっと痒い所に手が届くようにちょっとがんばって、書いてみてください。
    今回、「冬の詩を書こう」というテーマを設けましたが、なにか違うものが浮かんで来たらそれはそれでもちろんOK.としました。
    また、前回、庭文庫のもうひとりの店主ももちゃんが、詩の種の見つけ方も教えてくれました。
    ももちゃん
    上手く書こうとしないでいい。
    こころに浮き出てきたものを、そのままとらえる。外に出て詩の種を探すときは、
    植物なら植物と、会話するようにやる。むしろ植物から語り掛けてくるのを待つ。
    無理に会話しなくてもいい。
    自分の心から出てくる場合もあるし、植物やモノなどから言葉の切れ端をもらうこともあるということですね。
    ちなみにわたしは、これは完全に好みなのですが「なるべく透明になって書く」ということに努めています。
    じぶんフィルターを無くすと、透明になります。そして濃縮された心が出てくるイメージです。

    詩の発表

     

    さて、45分間という時間をとって、みんなが会場に散り散りばらばらになり、それぞれで詩を紡ぎました。

     

    順番に詩の発表をしました。

     

    詩の発表は、

    最初に自分で、自分の描いた詩を朗読する

    2名ほどから、感想をもらう。

    そのあと、書いた意図を発表する(いわば種明かし)

    という流れで行いました。
    詩の朗読をきいて、それぞれ感じたこと、筆者がどのように考えて書いたか、などの感想をもらい、
    筆者である発表者が、詩の意図を言います。
    そうすると、同じ詩でも感じることはひとそれぞれなんだな~という気づきが得られました。

    万年筆で詩を書こう会

    Iさん、今年は暖冬だったので雪が降らなかったことを思って書いたそう。気候の心配をしつつ、肯定もしています。潔いです。

     

    万年筆で詩を書こう会
    Fさんの詩は、完成形は1行目の詩とのこと。実はこれは、撤去されることになった石油ストーブに向けて書いた詩なんだそう!

     

    IさんとFさんの発表したのは1行詩でしたが、1行詩のような余韻を含む詩は、読み手に想像させる部分が大きくなります。

    これら2つの詩も、筆者と読み手では解釈が違っていました。おもしろい。

     

     

     

    万年筆で詩を書こう会

    NY出身のCさんは、「罪」について書いてくださいました。繰り返しの言葉で対比をしている、ギミックのある詩です。

     

     

    万年筆で詩を書こう会

    Tさんもはじめて詩を書くということでしたが、子供のころの柔らかい心を思い出して書いてくれました。あ~わかるな~。

     

    万年筆で詩を書こう会 万年筆で詩を書こう会 万年筆で詩を書こう会

    Yさんは3枚に散文を書いてくれました。自分を律する心と、自由への希求…そんなものを感じました。

     

    Y万年筆で詩を書こう会  万年筆で詩を書こう会

    みきちゃんの詩。沖縄出身なので冬の詩を書こうというテーマが難しかったとのこと。悲哀と、やさしさと。ナイフのような切れ味との評が。

     

    万年筆で詩を書こう会

    Tさん。さみしくっても、「だれか」に対してお祝いをするという人間味があふれたやさしい詩です。お人柄がでています。

     

    万年筆で詩を書こう。じぶんの心を救うポエトリーライティング【ワークショップ】 - 関連画像2 万年筆で詩を書こう。じぶんの心を救うポエトリーライティング【ワークショップ】 - 関連画像3

    わたしはというと、16歳の冬に、病気で亡くなった級友のことを思い出して詩を書きました。
    級友の入院中、手紙を何回かやりとりしましたが、最後に伝えたい手紙を出せなかったのがいまでも悔やまれていて。
    詩にすると、天国に手紙がいくような気もしています。

     

    (英語詩も読むのが好きなので、英語でも訳して書いてみました。)

     

    同じ時間を過ごしても、このように違う言葉がひとりひとりから発露されるということは、不可思議であり、いとおしいことですね。

     

    みなさん、どの詩も素晴らしかったです。

    みんなからの感想

    さて、みんなからの感想をもらいました。

     

    ・詩を書くのははじめてだったけど、こんなに長い時間自分の心と対話するとか、紙にしたためるということとかが日常ではしないので、とても貴重な時間になった。頭がからっぽになって気持ちよい。

    ・詩ははじめて書いたけど、自分はこういう意図で書いてると思っても、相手は全然違うことを思っているのがびっくりして、おもしろかった。

    ・自分が詩を聞いて「こういうことを言ってるんだろうな」と思っていても、筆者の意図がまったく違ったりして、いつも自分は自分のフィルターを通してみているんだなとリアルにわかった。

    ・いろんなタイプの詩を読んで(聞いて)、じぶんは書くと散文的にだらーっと書いてしまうけど、韻を踏んだり詩のかたちを気にしながら書くということにも挑戦したいと思った。

    ・テーマに沿って詩を書くということを普段しないので、難しかったけど、逆に訓練になってよいものが出てきたと思う。

    ・忙しい毎日なので、ゆっくり机に向かえて、貴重な時間を過ごせた。

     

    などなど・・・

     

    場のやさしさが、あらたなやさしさを生む。寮美千子さんの本のように、確かにやさしさがあふれでた、そんな会となりました。

     

     

    終わった後、ほんとうに世界が変わったような気がして、胸が熱くなりどきどきしました。

     

    まとめ

    忙しい現代で、ゆっくり詩を書くということはなかなかできないかもしれません。

    でも、こういう場でならきっとできると思います。

     

    今回から、万年筆の貸し出しはいちおうしますが、それメインではありません。
    わたしは仕事と思いながら詩を書くのは嫌なタイプなので…

     

    ライフワークとして続けていけたらいいなと思っています。

     

    この詩のプログラムは、いろんな人が必要としていると思います。
    生きづらい人、重荷を背負う人、がんばりたくてもがんばれない人。いろんな人の中にきっと美しい詩があるんだろうなと。
    こどもたち向けにもやってみたい…。

    ▶ Amazonで見る

    ご興味がある方は、ぜひお友達同士ででもいいので、この詩のプログラムをやってみてください。

     

    世界が変わると思います。

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  • 【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう

    手書きで、もっとこころは自由に。

    好きな万年筆とインク。そしてお気に入りの紙。これらを、「こころを表現すること」に使ってみませんか?

    Il Duomoでは、筆記生活をより豊かにするための万年筆の楽しみ方をお伝えしています。
    今回は古本屋さんで詩人である庭文庫の中田実希さんの詩のワークショップにIl Duomoの店長が実際に参加し、万年筆のインクから言葉や思いを連想しながら詩を書くというワークショップをしていただきました。

    記事を読んだら、みなさんもぜひ思い思いの詩を万年筆にゆだねてみてくださいね。

    実は小学校1年生の時から詩を書き溜めていた私ですが、詩を誰かに習うのはこれが初めて。しかも中田さんの詩は切れ味鋭いのにどこか繊細で儚くて、はじめて読んでからすっかりファンになってしまったので、ワークショップを受けるのはとっても楽しみだったのでした。

    今回は雰囲気とコンセプトがぴったりの「ギャラリーカフェ詩と美術館」にてワークショップを開催していただきました。

    中田実希の詩のワークショップ

    中田実希プロフィール写真

    中田実希は沖縄生まれ沖縄育ち。東京で数年間勤めていたころに若松英輔の詩の講座に参加。同人誌「時の栞」に参加。詩集「ゆれる」刊行。2016年に岐阜県に移住。詩人であり古本屋。

    詩のワークショップの画像-内観

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう
    中田実希

    まず、今日書く詩は「良い詩にしよう」と思わないことです。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像2
    Il Duomo佐藤亜弥美

    え、どういうことですか?どうせ書くならカッコイイ「良い詩」を書きたいですけれど…。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像3
    中田実希

    詩というのは自分の心から湧き上がってくるものをそのままに言葉にしてみる、いわばスケッチのようなもの。「わかりやすい文章」でなくてもいいのです。師匠の若松さんも仰っていましたが、詩とは「自分の心を救うための言葉」であり、「書かざるを得ない人」が書く文字です。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像4
    Il Duomo佐藤亜弥美

    宮沢賢治の「心象スケッチ」とはそのことですね。書かざるを得ない人、といいますと?

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像5
    中田実希

    本当につらい時を想像してみてください。あなたのまわりの人々がやいのやいのあなたに投げかける応援や慰みや、アドバイス…なかなか染み透らないことが多いのではないでしょうか。
    それに対して、自分の心の中から出てくる言葉というのは、間違いなく自分自身の道しるべとなるものなのです。
    ですから詩というのはそういったしょうがなく心の中からふつふつと湧き上がってくるものだと思います。
    わかりやすく書こうとする自意識を働かせると、自分のためというより、人のための文章になってしまうのです。それも悪くはないですが、本当に自分を救うのは自分の言葉だ、ということを念頭に書いていくといいかと思いますね。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像6
    Il Duomo佐藤亜弥美

    なるほど、確かに私が詩を書き始めたきっかけも、自分を救うためでした。小さい頃は内向的だったので、自己主張がうまく出来なくて。女子特有の仲間はずれとかも嫌で嫌で、でも仲間を拒むメンタルが無かったので、詩を書いて悲しい気持ちを分散させていましたね…。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像7
    中田実希

    私も若松さんの詩の講座を受けるまでは詩を人に見せるなんて恥ずかしいと思っていましたが、自分の心を救うために書かずにはいられず人知れずたくさん書いてました。詩が無かったらもっとつらかったろうと思います。

    Step1:詩の朗読

    詩のワークショップの画像-万年筆

    もともと言葉とは発するためにあるもの。声に出して読むことでより詩を深く感じることができます。
    中田さんが作った、いろいろな詩人の詩を集めたミニノートのなかから、「ここを読んでみて」「次はこれを」と順繰りに参加者みんなで読んでいきます。

    心よ
    こころよ
    では いっておいで

    しかし
    また もどっておいでね

    やっぱり
    ここが いいのだに

    こころよ
    では 行っておいで

    (八木重吉「花と空と祈り」より抜粋)

    中田さんは参加者の好みの詩人を事前に把握していて、八木重吉が好きな私はこの詩を朗読することができました。声に出して詩を読むのはちょっぴり緊張しますが、言葉をしみじみと味わうことができ、また自分の声が詩を発することで詩人と自分との共同作業のような味わいとなり、感じ方が深くなりますね。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像8
    Il Duomo佐藤亜弥美

    八木重吉はこんな素朴な詩が多いんですが、たまにドキッとするような鋭さがありますよね…。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像9
    中田実希

    こんど原民喜も読んでみて。すごく爽やかなので、好きになると思う。

    Step2:今日の気分のインクの色を選ぶ

    詩のワークショップの画像-インク

    さて、今回は中田さんとIl Duomoのコラボ企画ということで、詩の着火剤になるものを「インク」にしようと決めました。着火剤とは、なにかイマジネーションを膨らませるようなものを嗅いだり、味わったりして、そこから連想する言葉をつないでいくものです。前回のワークショップでは「寒茶」という冬につくる甘い番茶を飲んでから、言葉を連想していったそう。

    今回は色彩雫を用意しました。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像10
    Il Duomo佐藤亜弥美

    今朝から緑色にしようって決めてたので、緑さわやかな竹林で。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像11
    中田実希

    私は躑躅(つつじ)だな~。綺麗な色。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像12
    七海ゆき

    (ギャラリーカフェのスタッフも参加!)私は…稲穂かな。

    Step3:インクから連想する言葉などを書き続ける

    詩のワークショップの画像-説明

    中田:では、実際にインクを吸入したり、試し書きしてみたりして、心の中に浮かんでくることをノートにひたすら書いていきましょう。30分くらい時間をとります。

    ほかにも中田さんは気を付けたいこととして、

    • 飛躍を恐れない
    • かゆいところを掻くように書く
    • 詩にならなくても散文でも日記でも俳句でもよい
    • 浮かんできたことはとりあえず書いてみる

    ということを教えてくれました。飛躍を恐れないというのは、インクの色からかけ離れてしまっても気にせず心に浮かんできたことを書き続けるということです。
    また、かゆいところを掻くように書くというのはどういうことでしょうか?

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像13
    中田実希

    普段の生活の中で、「心の中がかゆい」というようなことがあると思います。何か得たいは知れないけど、もやもやする心。そんなとき、詩を使って、かゆいところを掻くように、言葉で表現するんです。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像14
    Il Duomo佐藤亜弥美

    なるほど、それって詩や文章を書くうえで一番大変なところですよね。「こんな言葉で、わたしの思い表現できてないわ!まだかゆいけど!」って憤ることが多々あります。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像15
    中田実希

    いろいろな詩を読んで、感じて、書き出すということを繰り返すといつか自分の詩がスッと現れるときがくるのではないでしょうか。とはいえ私も、東京にいたときの詩と、岐阜に移住した後の詩では、まったく詩の感じが違います。わたしの心の変化に従って、詩もどんどん変化しているようです。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像16
    Il Duomo佐藤亜弥美

    では今、「表現しきれてないな」と思っても、どんどん書いていいんですね…。その間に自分も変化するかもしれないし。実は詩は好きだけど下手なので、最近は書くのをためらってました。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像17
    中田実希

    詩は自分のためのものです。どんどん書きましょう!私はいろんな人が詩を書きながら暮らす生活をしたらいいじゃないと思っていて、それは自分が詩を書くことで救われたからなんです。いま自分の気持ちが表現できないって困っている人がいたら、その助けにちょっとでもなればと思いつつ古本屋と詩のワークショップをしてるんですよ。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像18
    Il Duomo佐藤亜弥美

    素晴らしい!私の万年筆屋のコンセプトとも似ています。筆記で心を整えて暮らす、っていいですよね。あんまり詩的じゃない言い方だけど心のデトックスみたいなイメージです。

    Step4:実際に詩を書こう!

    詩のワークショップの画像-連想するものワーク

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像19
    中田実希

    30分経ちましたが、いかがでしょう?どんな言葉が出たか、教えてください。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像20
    七海ゆき

    私は稲穂を選びましたが、書いた言葉はあんまり稲穂と関係なくって、動詞や形容詞をとにかくたくさん書きなぐりました。浮かんできた短歌も書いちゃったり。でてきたのは「西に行く」「東から出る」「ぬばたまの」など…。

    詩のワークショップの画像-連想するものワーク

    (七海さんのをみてみると、もうすでに美しいダダイズム※の詩みたいで素敵でした。)

    ※ダダイスム(仏: Dadaïsme)は、1910年代半ばに起こった芸術思想・芸術運動のことである。ダダイズム、あるいは単にダダとも呼ばれる。第一次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底に持っており、既成の秩序や常識に対する、否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする。
    Wikipediaより引用

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像21
    Il Duomo佐藤亜弥美

    私は竹林を選んだんですけど、最近やたら緑が好きなので、とにかく緑に関することを書きました。小さいころ裏庭で詩を書いてたのを思い出し、その時の気持ちも書いたり。ちょっと飛躍はできなったな…。でてきた言葉たちは「きらきらしている朝露のつぶ」「ねころがる」「ちょうちょになれるんだよ」「詩は緑から出でる」など。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像22
    中田実希

    では、この出てきた言葉をもとにしてもいいですし、また飛躍してもいいですけれど、詩を書いていきましょう。文章でも構いません、短歌でも。俳句でも。さあ、どうぞ!

    ここからは30-1時間くらいかけて詩を書いていきます。
    確かに、先に言葉出しをしてアイスブレイクのような感じで心もちょっとほぐれたので、急に詩を書くよりかは格段に言葉が出てきやすくなっています。

    でも実は、私はこの日の前に読んだ本の命題のことで考え込みすぎて、なかなか素直な言葉・詩が出てきませんでした。どうやら思考しすぎると、言葉が出てきにくくなるようです。というわけで中田さんに相談してみました。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像23
    Il Duomo佐藤亜弥美

    先生…どうしても思考が邪魔して今日は出てきません。途中まで書いてるんですが、どうも素直でないようです。

    【万年筆の楽しみかた】万年筆とインクで詩を書いてみよう - 関連画像24
    中田実希

    では、家で続きを書いてみてもいいでしょう。宿題ということで。

    Step5:詩を書く時間を生活の中に入れてみた

    そんなわけで続きは後日書くことにしました。中田さんの詩のワークショップは「命を削るように詩を書く」というのでなく、「自分の心のために、詩を生活の一部にしてほしい」というゆるくて優しいもの。詩を書くことがストレスになってしまっては意味がありません。私の気が向いた時に書くことに。

    ワークショップを受けてから、一日の終わりの手帳時間のあとに、「詩の時間」をつくりたいと思うようになりました。いままで放置していた私の心を表現する気持ちがむくむく湧いてきたようです。

    後日、「つゆくさ」という詩を書くことが出来ました。
    中学生の時、夏休みの自由研究で一行詩を1日1つ作るという課題を自分に課しました。ある朝、庭に咲いている紫露草を見て、

    「むらさきつゆくさ あさ ひとしずく」

    というのを書いたことありました。それ以来、紫露草は私にとってとても特別な花となりました。
    紫露草へ抱いた気持ちは、なんだったんだろう?というのを探っていくと、思春期特有の「誰にも理解されない」という孤独感だったり、「もっと友人にこうふるまいたいのに出来ない」という自我のかたまり、そして、ただただ美しく咲いて立っているだけの、淡い紫の花が、憧れのように中学生の私に迫ってきたのかもしれません。その思いが、十数年経った今、新たな詩に昇華したような作品に仕上がりました。

    良い詩かどうかはわかりません。でも、詩のワークショップのとき感じた「かゆいところ」をちょっとだけでも掻くように書けたのではないかなと思います。

    お気に入りの文具で書く詩の時間は豊かだ

    詩のワークショップの画像-内観2

    詩を書くのに万年筆は必須ではありません。でも、今回好きな色のインクを使い、大切にしている万年筆を使って、好きなノートに詩を書くというワークをしてみて、ただ単純に書いている時間が上質に感じました。

    現代ではモノが溢れ、お金があればなんでも手に入る世の中です。物質的には豊かな生活をしていても、だからこそ、実は忙しすぎて自分の心をないがしろにしていたり、その延長で他者につらく当たってしまったり、ネガティブ思考になってしまったり。そんなことも多々あるのではないでしょうか。心が豊かでないのに、本当に豊かであると言えるのでしょうか?

    心は誰にも干渉されることのない自分のもので、自由であるはずなのに、他人の目を気にしたり、自分の意見を通すことばかり考えたり、不自由になりがち。手書きと詩は心を自由にしてくれるツールのひとつです。

    忙しい時、苦しい時、ちょっと思考を一休みして、丁寧に万年筆にインクを入れてみる。

    美味しいコーヒーでも飲みながら、自分の心の声に耳を傾けて、それをとことん言葉にしていく。

    それが詩になる。

    それって豊かな時間ではないでしょうか?
    自分の心をちょこっとでも救いたい、表現してみたい、ちょっと心の一休みをさせてあげたい。そんな方はぜひ中田さんのやり方で詩を書いてみてはいかがでしょうか。
    Il Duomoのショップで文具をみる

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