『あなたの子どもは、あなたの子どもではない。かれらに愛情を与えてもいいが、あなたの考えを与えてはいけない。…(中略)…あなたは弓であり、あなたの子は、その弓から生きた矢として放たれたものである』
ハリール・ジブラーン 「預言者」のなかの「子について」から
もくじ
現代人の心を刺すハリール・ジブラーンの言葉
モンテグラッパから、ハリール・ジブラーンをフィーチャーした万年筆が発売されています。
中東の詩人も好きなIl Duomo店長ですので、ちょっとハリール・ジブラーンと、この万年筆について深堀りしていこうと思います。
モンテグラッパ Genio Creativo(ジーニオ・クリエイティボ)コレクション ハリール・ジブラーン 万年筆
日本では中東の詩ってなかなか馴染みがないのですが、ヨーロッパではハリール・ジブラーンは「20世紀のウィリアムブレイク」と呼ばれ、有名な詩人です。
マイケル・ジャクソンが生前、愛読していた本としても有名なんです。あのMJが…!
詩集としては「預言者」が有名です。日本ではカリール・ジブラーンと呼ばれています。
冒頭の
『あなたの子どもは、あなたの子どもではない。かれらに愛情を与えてもいいが、あなたの考えを与えてはいけない。
…(中略)…あなたは弓であり、あなたの子は、その弓から生きた矢として放たれたものである』…
という言葉。ハリール・ジブラーンの詩集の中でも有名な「子について」からの一節です。
中東の詩のいいところは、宗教観や哲学が、ストレートに表現されているところだと私は思っています。
ヨーロッパの詩人は、風景や恋愛模様など織り交ぜながら、情景を大事にしつつ描写していく詩が多いのですが、
中東の詩はやはり砂漠的といいますか、いらないものを極限までそぎ落とした遊牧民的な表現方法になります。
聖書の言葉や、コーランの言葉に似た、乾いた土地の言葉です。
そこがいい。
中東の詩を味わうときは、茫漠とした荒野を思い浮かべながら読むのがいい。
「死について」もシンプルです。
「死について」
死ぬとは風のなかに裸で立ち、
太陽のなかに溶け込むこと
休みなく打ち寄せていた呼吸の波からの解放だ
呼吸は誰にも邪魔されることなく空へと昇り拡大し
神を探し求めにいけるのだ
沈黙の川の水を飲んだときのみ
あなたはこころから歌う
山の頂上にたどり着いてこそ
真に登りはじめることができる
そして身体が大地に還ったときにはじめて
あなたは真に踊るのだ「預言者」より
ハリール・ジブラーンとは?
ハリール・ジブラーン(Khalil Gibran)はオスマン帝国末期の1883年に、現在のレバノン北部でキリスト教マロン派の家庭に生まれます。12歳の時にアメリカ合衆国に移住しました。
その後15歳になると彼は再びレバノンに戻って、アラビア語や文学の他、宗教を学んでいます。
そして19歳になると再び渡米してアラビア語で作品を書き始めます。
その後何故か25歳から2年間に渡ってパリであの彫刻家のロダンに仕え、
18世紀に詩人、画家、銅板画職人として活躍したイギリスのウィリアム・ブレイクと並び称されるようになったのです。
彼は宗教や哲学に深く根ざした、壮大な宇宙的なヴィジョンを謳う詩や絵画などを多数残し、後世の思想や表現者たちに大きな影響を与えてきました。
日本との関係という点では、前皇后陛下がかつて皇太子妃時代にレバノンを訪問された際、当時のレバノン大統領からハリール・ジブラーンの「預言者」を贈られ、それをご愛読されていたようです。
「子について」
赤ん坊を抱いたひとりの女が言った。
どうぞ子どもたちの話をしてください。
それで彼は言った。あなたがたの子どもたちは
あなたがたのものではない。
彼らはいのちそのものの
あこがれの息子や娘である。
彼らはあなたがたを通して生まれてくるけれども
あなたがたから生じたものではない、
彼らはあなたがたと共にあるけれども
あなたがたの所有物ではない。あなたがたは彼らに愛情を与えうるが、
あなたがたの考えを与えることはできない、
なぜなら彼らは自分自身の考えを持っているから。
あなたがたは彼らのからだを宿すことはできるが
彼らの魂を宿すことはできない、なぜなら彼らの魂は明日の家に住んでおり、
あなたがたはその家を夢にさえ訪れられないから。
あなたがたは彼らのようになろうと努めうるが、
彼らに自分のようにならせようとしてはならない。
なぜなら命はうしろへ退くことはなく
いつまでも昨日のところに
うろうろ ぐずぐず してはいないのだ。あなたがたは弓のようなもの、
その弓からあなたがたの子どもたちは
生きた矢のように射られて、前へ放たれる。
射る者は永遠の道の上に的をみさだめて
力いっぱいあなたがたの身をしなわせ
その矢が速く遠くとび行くように力をつくす。
射る者の手によって
身をしなわせられるのをよろこびなさい。
射る者はとび行く矢を愛するののと同じように
じっとしている弓をも愛しているのだから。ハリール・ジブラーン 「預言者」のなかの「子について」
世界の多くの親たちが子育ての最中、あるいは終えたあとにこの言葉に巡り合ったとき、
自らの子と対峙した過去の悩み多き日々のことをおそらく思い浮かべたことでしょう。
そしてその当時の自らの行動を客観的に眺めて「あれでよかったのだ」と思う人より、
むしろ多くの人々は、親の身勝手な考えを子どもにどれだけ押しつけてきたのかも知れないことに思い至り、そのことを後悔するのかも知れません。
親(弓)のあなたは、大いなる彼方に向かう子ども(矢)のために、曲げいためられることに喜びを感じなければならない、
つまり子どもの独り立ちをあくまで補佐する役割に徹せよと諭す彼の言葉に、人生の深い意味を悟ることになるのです。
ハリール・ジブラーンの著書
特に1923年に英語で発表された、預言者と人々との問答を基調にした詩集の「預言者」は世界の30カ国以上に翻訳されたベストセラーとなったものです。
このなかの一節が、冒頭の子どもについての名言です。
彼はこの他にも沢山の著作を残していますが、なかでも有名なのはイエスの生涯を描いた長編詩集の「人の子イエス」です。
モンテグラッパのハリール・ジブラーンに敬意を表した万年筆
このように後世に多大な影響を及ぼしたハリール・ジブラーンですが、イタリアの高級万年筆メーカーのモンテグラッパ社は、彼の芸術的功績を称え、それを記念したシリーズを発表しています。
それは「ジーニオ・クリエイティボ」というコレクションを通じて、ハリール・ジブラーンの限定モデルとして発表されています。
このモデルのコンセプトは、彼が追い求め、表現し続けた、慈愛と知慧の精神とその思想。それを万年筆のなかに織り込んだ逸品です。
モンテグラッパ Genio Creativo(ジーニオ・クリエイティボ)コレクション ハリール・ジブラーン 万年筆
クリップ部の手が特徴的ですよね。
これは、こちら↓↓のハリール・ジブラーンの絵画「Divine World」の真ん中の手をデザインしたもの。
神の手を表しているのでしょう。
ちなみにこのペンのクリップ部の手のひら真ん中の目には、サファイアが埋め込まれています。
モンテグラッパ Genio Creativo(ジーニオ・クリエイティボ)コレクション ハリール・ジブラーン 万年筆
そして世界的ベストセラーとなった「預言者」の表紙の彼の自筆をキャップリングにデザイン。
そして天冠には彼自身がロゴとして使っていた「K」と「G」が重なったデザインとなっております。
また重要なペン先には、ハリール・ジブラーン自身が描いた自画像が刻印されています。
この稀有な万年筆のシリーズは、彼が生まれた年の1883年に因み、世界で1883本しか作られていない、正に限定されたお宝品とも言える万年筆なのです。
まとめ
この万年筆を手にした方は、ハリール・ジブラーンの詩を臨書することによって、その奥深い思想の一端に改めて触れることができるかも知れません。
そして貴方の頭のなかを駆け巡る想像力は、かつてハリール・ジブラーンが憑かれたようにペンを走らせて書き留めたように、貴方に何か新しい、類まれな何かをもたらしてくれることになるのかも知れません。
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