言志四録という言葉を聞いて、何のことやらと思われる向きは少なくないでしょう。この言葉が脚光を浴びたのは、2001年5月に小泉純一郎元総理大臣が衆議院での教育関連法案の審議中にこのことに触れ、一躍知名度が上ったものです。
実はIl Duomoのある岐阜県恵那市には、言志四録の著者・佐藤一斎が生まれた岩村藩のある、岩村町があります。(佐藤一斎が生まれたのは実際は江戸内の岩村藩邸だそうですが)
小泉純一郎氏は佐藤一斎を敬愛しているらしく、お忍びで岩村町を訪れたこともあるんですよ。
すごくプライベートな話になりますが、店長じつは一時期その岩村町に住んでいたので、佐藤一斎を学ぶ場面が多く、言志四録にも感銘を受けまして、思わず4冊購入。愛読書として、人生の折には読むようにしています。
もくじ
言志四録とは?佐藤一斎とは?
言志四録とは、江戸時代後期の美濃国岩村藩出身の著名な儒学者である佐藤一斎が、
42歳(1813年)から82歳(1853年)までの40年に渡って書き残した、
自己啓発・哲学の部類に当たる語録のことです。
この語録はやがて彼の門下生を通じて幕末の志士たちに大きな影響を与え、
明治維新という国家的な革命を成し遂げる多くの人物を育てたのです。
そしてその類まれな自己啓発書としての内容は、現代の人たちにも長く読み継がれ、今でも影響を与え続けているのです。
おすすめは講談社の言志四録。原文と対訳、説明がバランスよく記されており、いちばんおすすめです!
言志四録は佐藤一斎が42歳から53歳までの間に執筆された『言志録』、
57歳から67歳の『言志後録』、67歳から78歳の『言志晩録』、
そして80歳から82歳の『言志耋(てつ)録』の4書を総称して言い、
箇条書きにされた教えの条数は1133にも及んでいます。
言志四録は歴史を動かした?
言志四録を書いた佐藤一斎は朱子学、陽明学に詳しく、門下生は6000人とも言われています。
そして陽明学の門下生からは松代藩士で兵学者、朱子学者、思想家の「佐久間象山」が現れ、
また佐久間象山の門下生として「勝海舟」「吉田松陰」ら幕末を大きく動かした稀有な人物を輩出しているのです。
そして吉田松陰の「松下村塾」からは「高杉晋作」「木戸孝允」「伊藤博文」ら明治維新で大きな役割を果たした志士たちが登場しています。
また薩摩の「西郷隆盛」は言志四録を愛読し、そのなかから気に入った101条を選んで「南州手抄言志録」として残しています。
悩めるときに臨書すると心が落ち着く
人はあれこれと物事に悩んでいるとき、優れた言葉に出会うとどこか救われた想いになるものです。
そしてその言葉を臨書することで、さらに平穏な心持ちになれることがあります。
それでは言志四録のなかの、もうひとつ有名な「志」を語った第32条を臨書してみましょう。
(言志録32条)
(立派な人になろうとの強い志を立てて、それを達成しようとするなら、
薪を運び水を運んでも学びに通じる、
ましてや書物を読み、事の道理を知ろうとそれに集中するなら、目的を達成しないほうがおかしい。
だが志が立っていなければ、終日読書しても無駄に終わることになる。
だから立派な人になるには、なによりも志を確立することが大切である。)
何からでも学べる、学ぼうと思うならば。ということですね。染み入ります。
言志四録のなかでも最も有名と言われる第60条は、
人は何歳になっても学び続けることによって人生を豊かにすることができると、
現代の私たちをもハッとさせる名言を書いています。
ではその一節に触れてみましょう。
『少くして学べば、則ち壮にして為すことあり。荘にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。』
(言志晩録60条)
(少年のときに学んでおけば、壮年になってから役に立ち、
何事かを為すことができる。
壮年のときに学んでおけば、老年になっても気力が衰えることはない。
老年になっても学んでおけば、ますます見識も高くなり、死んでもその学びの成果が朽ちることは無い。)
この一節を読むと、自分はこれまでいかに怠惰に生きてきたのだろうと誰もがそう思うほど、この名言は輝きを失わずに、今の世のなかにも通じるものなのです。
ちなみに、こちらは手製本の和風ノートに書きました。
佐藤一斎の哲学を手帳に書いておいて、心を律する
臨書というと仰々しいのですが、気になった言葉を万年筆に書いて、手帳に挟んだり、日記に書いたりするのもおすすめです。
書き下し文で書いてもよし。
原文で書いてもよし。
原文で書くと、字の並びのリズムも楽しめますよ。
こちらも有名な一句。
(己に克つということは、一瞬一瞬の間にできることである)
この言葉は非常に好きなので、手帳の最初のほうに書いておこう。
これはいろいろな解釈のある言葉なのですが…。
たとえば、「スリッパがそろっていないな~」というときに、めんどくさい心をグッとこらえて、スリッパをそろえる…。
礼状を書こうかな、やめようかな、と思ったときに心を律して礼状を書く時間をとる。
電車で妊婦さんに席を譲ろうかな、やめようかな、と心が揺れたときに、勇気を出して席を譲る。
そんな小さな一瞬一瞬の出来事のなかでこそ、克己-つまり自分に克つということができるというわけです。
自分に克つということは、修行に出るとか断食するとかなにも大仰なことではなく、
日常生活の中で善きことを勇気を出してちょっとずつやっていくことだよ、と佐藤一斎先生は言っているのではないでしょうか?
やさしくて強い言葉たち
佐藤一斎はただ厳しい儒学者としてだけでなく、思いやりのある一面もあるのだなあとしみじみ感じいる一節があり、私はとても好きです。
秋霜(しゅうそう)をもって
自らをつつしむ」
(春の風のように人には接し、秋の霜のように、厳しく自分を律することが大事である)
自分に厳しい人は、他人にもそれを求めて厳しくなりがちですが、それを戒めている言葉ですね。
小泉純一郎氏も演説でこの教えを引用していたとか。
あまり馴染みのないであろう佐藤一斎の言志四録ですが、ハッとすることの多い文章が多いので、必ずどなたの心に響く一節があると思います!
ぜひチェックしてみてくださいね。
編集後記
岩村町に住んでいた時、重伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)というなが~い城下町の中に家を借りていたのですが、
重伝建地区の家々には、各戸に佐藤一斎の教えが書かれた板が貼ってありました。
散歩をしていると目に入る、佐藤一斎の文。
数十歩ごとに教えが目に入り…
それを毎日読んでいるうちに、心が律されていくようで非常に心地よかったです。
たまに「ひとり言志四録ツアー」をして重伝建地区を歩きながら読んだりしていました。
それを岩村出身の人にいうと、「いっこいっこ読んでんの⁉モノ好きね」
といわれたものですが、わたくし、儒学とか好きなので。
岩村で佐藤一斎の言志四録と出会えてよかったな、としみじみ思います。
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