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もくじ
▶【珍しい軸】エボナイトやセルロイドの歴史とイタリアメーカーの関係性
万年筆を深く知っていくと、現れる「セルロイド」「エボナイト」という素材…。ご存知でしょうか?
どちらも万年筆など身近なものに使われる素材の1種です。
今日はイタリアメーカーのペンを多く扱うIl Duomoの観点から、
セルロイドやエボナイト軸について語っていこうと思います。
セルロイドやエボナイトは、希少な素材であり最近ではあまり見られなくなってきました。
しかしながら主にイタリアメーカーでは、時代を逆行するかのように
これらの素材を使った軸が定期的に発売されます。
そもそも、なぜイタリアメーカーはセルロイドやエボナイトなどの軸を
いまだに生産しているのでしょうか?
もともと、こういった「古い」素材というのは、
効率性や取り扱いの簡便さを優先されて
プラスチック樹脂にその場を奪われてきました。
▶エボナイトとは?
アウロラ 限定生産品 インテルナツィオナーレ エボナイト サンド 万年筆
エボナイトは天然ゴムの一種です。
形状が変化しにくくインクからの影響も少ないので
万年筆にはすごく向いている素材なのですが
作るときに切削する刃を摩耗してしまうという難点があり
メーカーは切削しやすいプラスチックに移行していきました。
エボナイト独特の臭いがあり、経年で見た目もやや変化していきますが
丁寧に取り扱っていれば100年以上持つ優れもの。
エボナイトを軸に使う場合
エボナイトは、ゴムの一種の樹脂なのですが
軸に使う場合とペン芯に使う場合があります。
エボナイトを軸に使う場合は、他のレジン同様に、丁寧に研磨され輝きを持ちます。
独特のエボナイト臭を楽しむかたも。
変化はしにくい素材で、100年近く前のエボナイト軸をヤフオクで買って現役で使っているよ~というお客様もいらっしゃいました!
ただ、他のレジンもそうなのですが、紫外線により表面が曇ったりすることがあります。
窓際や、机の上などで常に光に晒されている状態ですと変化が早いので、ペンケースなどにしまうようにしてください。
それと、同種であるゴムとくっつけて保管してしまうと、ねちゃっとゴムが付着することがありますので
ゴムが触れないように保管してください。
エボナイトをペン芯に使う場合
いまはプラスチック樹脂を使うことが多いペン芯ですが、
エボナイトペン芯だと利点があると言われます。
希少価値ももちろんありますが、実際にインクフローに与える影響もあります。
具体的には、インクフローが安定する、と言われます。
これは要検証なのですが、インクを替えたりしたときも、いつも安定的にフローを供給してくれるということです。
また、経年変化がしにくいので、長年使っていても縮んだりすることがないので、インクフローに影響がないということも言われます。
エボナイトペン芯は、プラスチックと違いしっとりとインクが染み込んでいく感じがありますので
オーガニックなインクフローになってくれるのかもしれません。(ただ、これは検証したことがないので、またいつか検証してみようと思います!)
▶セルロイドとは
アルマンドシモーニクラブ 限定生産品 トリアンゴロ ブラックルーセンス セルロイド
硝酸セルロースに樟脳(しょうのう)を混ぜて熱し圧縮した物質で、
世界最初のプラスチックです。
いま現代で使われている石油系プラスチックとは違うものです。
温かみがあり、発色が柔らかで透明感に優れていますが
紫外線や熱に弱く、メーカーは売りづらいものとなっています。
イタリアではメガネもアパレル商品として有名ですが
セルロイドフレームをいまだに作り続けています。
セルロイド自体のメーカーも、年々減り続けているのですが
イタリアでは数個のメーカーが残っています。
その理由としては、「手触り感がすばらしい」ということと、
「見た目が良い」ということに尽きると思います。
セルロイドも紫外線には弱いです。
紫外線に晒されていると、表面が白くなったり縮んだりします!
エボナイト同様に、暗所に保管してください。
イタリアの風土から生まれるモノづくり
さて、イタリアのペンになぜエボナイトやセルロイド軸が多いのか?という疑問があります。
これに答えるためには、イタリアの歴史や風土、政治などもいろいろと絡み合ってくるので
ちゃんと深掘りすると論文みたいになりそう。笑
ですので、難しいことは今回は避けておきましょう。
ひとつには、イタリア人は美意識が非常に高く、
少しでも良いものであれば、効率性よりも美を優先する国民性です。
この国民性によりイタリア人は経済的にはアパレルなどで生き残っているという事実もあります。
より美しいものを作りたい!という気概が、古いけれども美しい技術を使った希少なペンづくりにつながっているのではないでしょうか。
ふたつめは、イタリアは非常に保守的なお国柄ですから
新しい価値観などは入りにくい土壌です。
そんなわけで、伝統的な技術が堅く守られやすい、ということがあります。
(ここについては今回は長くなりそうなので深堀は避けておきます…。)
みっつめに、イタリアは小さな企業が多い国です。
これも政治の話になりますが、中小企業で、仕組み化されにくい構造になっています。
小さな企業で、社長のワンマンな経営が多いので、社長の采配で行く末が決まります。
これにより、社長の「美的感覚」が如実に出やすいという経営です。
そのために、セルロイドなど希少なものも、社長の采配で使いやすいのかもしれません。
しかし、セルロイド軸やエボナイト軸を作るということは
通常よりも時間がかなりかかり、工程も多いですから
骨の折れることばかり。
セルロイドという素材自体、製品として売るまでに1年以上かかることも…。
このスタイルのモノづくり、まずもって現代の資本主義からはすこし(かなり?)外れることになります。
なぜかというと、儲けを多く出そうと思ったら、
・工数を減らす
・コストを削減する
・ロスを減らす
・たくさん作ってたくさん売る
ということをせねばなりません。
しかし、セルロイドやエボナイトは真逆…。
・工数が多い
・工数が多いし作るのに時間がかかるのでコストが高い
・取り扱いが難しいのでロスが多く出る
・たくさん作れないので少しずつしか売れない
ということになります。
現代の常識「はやく、安く、たくさん」の方式で行くと、「なんでイタリア人はそんな儲からない、面倒なことばかりしてるんだ?」となってしまうわけです。
イタリア人のモノづくりは儲けようとはあんまりしてない?
まったく儲けようとしてないとは、もちろんビジネスなので言えないとは思うのですが
やはりイタリア万年筆をつくっているメーカーさんたちの根底にあるのは「じぶんたちが納得できるものをつくりたい」という思いではないでしょうか。
むしろ「おもしろくないものを大量に作って売るなんてしたくない」という頑固な思いかもしれません。
(もちろん大量生産品でもおもしろいものはありますが…)
イタリア人は効率性重視でなく、美しいものを作ることに誇りを持っているので
結果的にセルロイド軸やエボナイト軸を作ることで
他国のメーカーと差別化ができているということにもなりましょう。
イタリア人が大量生産、大量消費のモノづくりにシフトしてしまうと、イタリアの強みが活かせないので
こういったセルロイド軸やエボナイト軸のようなペンを少数精鋭という感じで…これからも製品づくりをしていってほしいですね。
モンテグラッパ 限定生産品 ヴェネツィア ラピスラズリ セルロイド 万年筆
イタリアメーカーとセルロイドやエボナイトの歴史、いかがでしたか?
ぜひ一度商品ページを見て、イタリア人の美意識に触れてみてはいかがでしょうか。
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