調整はどのようになされるのか、というお話から
イタリア万年筆の魅力まで、深い話になりました。
調整をしてみたい、という方はぜひチェックしてみてくださいね!
モンテグラッパのフェリチタを書き味調整
フェリチタは幸福という意味です。
胴軸の素材はプレシャスレジンを使用しています。
ペン先はスチールで字幅はF。
コンバーター、カートリッジが使える両用式です。
Il Duomoさんのホームページを拝見していた所、ペン先調整オプションサービスがあることを知りました。
ペン先調整オプションサービスには「書き味調整」と「字幅の調整」の2つのオプションがありますが、今回は「書き味調整」を選択しました。
僕が描いた背開きの説明図です。
そのあと削り出しが必要なら研ぐという流れです。
フェリチタのペン芯の写真です。
調整師さんは万年筆を分解した際に腐食がないかも確認します。
ペン先調整後の万年筆の状態を詳細に記載してくださり、お客様に安心を提供しています。
優れた技術力でペン先調整を行なった調整師さん及び丁寧に検品した佐藤店長に感謝です。
書き味調整をしていただいて、書き心地がなめらかになり、スキップしなくなりました。
フェリチタとエキストラ1930を比較する
次にフェリチタ ジェリーボンオーシャン (F) とエキストラ1930 地中海ブルー (EF) を比較します。
フェリチタは両用式ですが、エキストラは吸入式です。
重量はフェリチタが軽くて (約20g)、エキストラは重め (44g) です。
フェリチタは軸が細めで羽根のように軽いので、重い万年筆が苦手な方や軽い万年筆が好きな人にお勧めです。
キャップポストしても重くないです。
小型なので手帳など携帯するのに便利です。
軸の太さや重量は女性向きのペンだと思います。
今回紹介した胴軸の色は青ですが、赤やピンクなどもあります。(Il Duomo注:2021.12月現在廃番)
一方、エキストラは太めの軸で、重量を利用してしっかりした文字を書けます。
エキストラの写真です。
フェリチタのペン先には古代ギリシャの雷紋模様であるグリークキー模様が描かれています。
切り割りは長いほうがしなりやすいということがありますが、
モンテグラッパの18Kは金属自体が分厚く、硬めなので切り割りが開きやすいということはあまりないようです。
エキストラのペン芯はなめらかな形状で、複雑な形をしています。
この形はメーカーによってさまざまであり、よいインクフローのためにメーカーがしのぎを削っているところでもあります。)
フェリチタはサラサラした書き心地で、エキストラは弾力のある書き心地です。
マルマンのルーズリーフでフェリチタ (F) とエキストラ (EF) で書いた文字を比較しています。
エキストラ (EF) はフェリチタ(F) よりも重量が重いですが、どちらの用紙もフェリチタ (F) の方が線が太くなりました。
フェリチタとエキストラに関しては、万年筆の重量よりもペン先の字幅 (EF、F) の方が文字の太さに影響を及ぼしていました。
エキストラはペン先に18金を使い、胴軸にセルロイドを使用して、首軸・クリップ・天冠にスターリングシルバーを使っていて、美しいデザイン及びなめらかな書き心地に心を惹かれますが、万年筆の入門者向けの価格ではないです。
フェリチタのように低価格でも妥協せずに製品の設計・製造を行ない、その一方でエキストラのように自社の技術力を結集した製品の設計・製造を行ない、お客様が満足する万年筆を提供するモンテグラッパのものづくりに対する熱い情熱に魅力を感じます。
そのレビューにはフェリチタに関する具体的な情報が掲載されています。フェリチタは廃盤品なので、新品の万年筆を探して購入するのが難しいです。
Il Duomoさんにはフェリチタのローラーボールの在庫はあるようですが…。
フェリチタのレッドベルベット、シュガーピンクダスト、カラメルゴールドのローラーボールは可愛らしいと思います。
モンテグラッパの現行品の万年筆ならばエルモ、ミアなどがお手頃な価格で初心者向きです。
使わなくなった万年筆を取り出して使ってみると新たな発見があるかもしれません。
ペンクリニックに持っていったりして、使わなくなったりインクが出なくてあきらめていた万年筆を復活させてみてはどうでしょうか。
調整師さんからのコメント
Il Duomoでは、ご希望の方に調整オプションという形でペン先調整を受け付けています。
ペン先調整を請け負っていただいている調整師さんから、コメントをいただきましたのでここに追記させていただきました。
今回のフェリチタについて
フェリチタの調整ですが、症状としてペンポイントの左右の高さのズレと切り割部分の背開きがありました。
どちらも書き味にとってガリ付きの原因になるものでしたので、その修正から始めました。
まず首軸からニブとペン芯を外します。ニブの形状修正をするときには、ニブ単体にしなくては上手く行きません。
始めにズレを直し、それと合わせて切り割周辺のニブ形状のチェックとペン芯との密着具合の確認。
背開きになっている場合、切り割を入れるときの影響で、変形して発生していることがあるので、
そういった歪み取りの上で切り割部分が、きれいな形になる様にしました。
わかりやすく例えるならニブの部分の入念な整体を行ったようなものです。
そのうえでスイートスポットを複数作りこんであります。
IL Duomoのお客様の調整に関して気を付けている所、大変なところ。
大変なところ、難しいところは対面での調整ではないという事につきます。
一人一人書き癖や筆記速度も違い、使う紙もインクも違う。
机の高さ、椅子の高さも違うし筆記速度も筆圧も違います。
本来の対面調整なら、それらを踏まえたうえで、パーソナライズするわけです。
そういった観察し、情報を得ることなしに調整するというのは何年間も調整をした経験と
、万年筆から読み取れるメーカーの設計思想(これはメーカーの想定する筆記者の像です)
からどの様な調整が、そのペンにとってあったものなのか導き出さなくてはいけない、という事です。
基本的な初期調整にしても、同じメーカーの同じモデル、同じ字幅であれば比較的同じ書き味になる様にしていますが、
それでも個体差は大きくあって影響しています。
イタリア万年筆は比較的製品が安定しているメーカーの物でも結構個体差は大きいので、そこらへんは難しいところです。
なので、基本的にスイートスポットを複数作りこみ、
捻りや立てたり寝かせたりといった書き癖に対応できる様にすると同時に
少し渋めのインクでも適切なインクフローになるようにしています。
後は、メッキや特殊コートされていたりするニブも多いので、
出来るだけ調整がペンポイントの範囲で収まる様に気を付けていますね。
真っ黒にコートされているニブに、金色の地金が露出していたりすると目立ちますから。
モンテグラッパの魅力
モンテグラッパの魅力としては、他のイタリア万年筆もそうなのですが美しい軸が上げられます。
それぞれのメーカーが各社の個性を持って作っているので全体のシルエットや軸模様と言った部分で、
メーカー名の刻印がなくても判別できそうな処は実に魅力的と言えます。
モンテグラッパは金属パーツの銀細工も良いですが、
軸のボリューム感というか、どういえばいいのか、
デルタが豊満な印象なのに対してモンテはほんの少しぽっちゃり、という感じでしょうか。
どことなく肉感的なラインを持っているペンだと思います。
イタリア万年筆の魅力
イタリア万年筆の魅力を一言でいえば百花繚乱の趣がある個性的なところと言えるかと思います。
個体差を、それぞれの個性と捉えてメーカーごとに、たとえ同じモデルであっても同じものは存在しない、
それは品質の均一性という観点からは良くないことかもしれませんが、
長く付き合う相棒としてみた場合、最大の魅力であるかもしれないと思います。
昔、自分が調整師になる前に友人がデルタのドルチェヴィータを購入した時の話です。
何軒もお店を回って、気に入った書き味と字幅の物を探し一番理想に近いものを入手したうえで、調整に出した時のセリフです。
「可愛いイタリア人の彼女が、自分の為に花嫁修業してきてくれるなんて最高じゃないか。」
調整や万年筆との付き合い方の本質の一端が表れている言葉だと思いました。
こんなふうに丁寧にペンの花嫁修業がなされていくんですね。
1本1本ペンごとにカルテは違うと思いますが、調整を検討されている方はぜひ参考になさってください。
モンテグラッパのおすすめペン
さてここまで書いてきましたが、
モンテグラッパのおすすめペンをご紹介します。
モンテグラッパ エルモ アンビエンテ チャコール 万年筆 Montegrappa Elmo AMBIENTE Charcoal Fountainpen
アップサイクルをテーマにしたペン。
軸にはリサイクル樹脂を利用しています。
シックなブラックは男女ともにおしゃれにファッションをランクアップさせてくれそう。
その他、アップサイクルをしたペンケース ノートなどの付属品たちもどれもかっこいいのでぜひチェックしてみてくださいね。
18Kの高級感ある書き味も見どころです。
ゆらぎと色を楽しめます。クリップなども変わっていて良いですね。